2014/06/01

魚の国の王子さま サイト・なろう転載済

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とっても久しぶりに短いお話を書きました。

◆ ◆ ◆

 もう何年も前の話だ。

 その頃の私は大学生で、大学の駅前にあるビルの、細い階段を上がった先にある居酒屋でバイトをしていた。
 居酒屋と言っても私達のような学生向けのにぎやかな店ではなく、手酌で日本酒を飲みながら刺身や焼いたししゃも、お浸しやひじきの煮物を黙ってつつく大人のための店だった。お客さんはほとんどがスーツ姿のサラリーマン、それに近所に住んでいるらしいおじいちゃん達。

 週に一、二度やってくる男性がいた。たまに他のお客さんと軽く挨拶をかわす様子から、近くの会社に勤めるサラリーマンらしいと分かった。スーツがよく似合ってて、いかにも仕事できそうな感じの人だった。
 彼は店に来ると必ず魚料理を頼んだ。たいていは焼き魚か煮魚。それを綺麗な箸使いで、美味しそうに食べる。
 一緒にバイトしていた先輩がお皿を片付けるときに「こういうのを『猫またぎ』っていうんだよ」と教えてくれた。猫も食べるところが残らないくらい綺麗に食べるって意味らしい。

 彼に憧れた。
 彼の食べ方に、彼のまわりの空気に憧れた。

 そんな私の気持ちは周囲にすぐバレた。おかげで彼は店のバイト達から陰で『(私)ちゃんの王子さま』と呼ばれるようになった。
 でも私のっていうより魚の、いや、魚の王子さまじゃ半魚人みたいだから、魚の国の王子さまって呼んであげて。

 私はまかないで出る魚の食べ方に気を使うようになった。店の皆が面白がってよってたかって食べ方を教えてくれた。唇や頬の肉も、目玉の周りのプルプルも、ここで食べ方を教えられた。初めて『鯛の鯛』が上手に取れた時はやたらと誇らしい気持ちになった。

 そうやってうまく食べる自信がつくと、海の近くに行けば魚の美味しい店に入りたくなる。
 でも当時付き合っていた彼は魚が好きじゃなかった。

「おまえ最近、魚ばっかりだよな」
 そう言った彼の前にはかつ丼があった。
「美味しいよ、魚。ヘルシーだし」
「ヘルシーってか年寄りっぽい。若さがない」
「せっかく海の近くに来たんだから、そんなこと言わずに魚食べればいいのに」
「やだよ、面倒くせー。骨とかちまちま取るの面倒くさい。かつ丼の方ががっつりいけて美味い」
「もったいなーい」
「全然まったく。俺、一生魚食わなくても生きていけるし」
 しつこく魚を否定されて不愉快だった。ついこうつぶやいてしまった。
「ふうん、つまんない人生」

 それからお互いにひとことも口をきかずに食事を終え、会計を別々に済ませてデートも彼氏彼女の関係も終わる最後に、彼が残した捨て台詞。

「魚食ってる女は口が魚くせーんだよ」

 今思えば私も悪かったんだと思う。
 教わったばかりの魚の食べ方を得意気に見せびらかすように食べていたから、嫌味っぽかったんだろう。
 もしかしたら他の男(王子さま)の影響だと気付いて妬いていたのかもしれない。
 ただ単に自分らしさを捜すお互いの道が、分かれ道に差し掛かっていたのかもしれない。

 けれど私が

「ばーかばーか、お前なんか肉の食いすぎでメタボでハゲろ!」

 と叫んだために彼との別れが口汚い罵り合いで終わった、あれは私だけが悪かったんじゃないと今でも固く信じている。

 それからしばらくして私は就職活動のためバイトを辞め、大学を卒業して就職した。
 職場で出会った彼も魚の食べ方が綺麗な人だった。やがて彼からプロポーズされ、はいと答えた後で大学時代の彼のことをふと思った。
 一生肉しか食べない人とは、やっぱり結婚してもつまらなかっただろうなって。

 そして今日、結婚式のために集まってくれたお互いの親族紹介で。
 なんと、王子さまに再会した。

 魚の国の王子さまは私の彼の従兄なんだそうだ。
 王子さまは結婚して今では魚の国の王さまになっていた。お妃さまと小さな王子と王女が一緒だった。
 私が彼に惹かれたきっかけはもしかしたら、王子さまの面影がどこかにあったからなのかもしれない。
 ということは王子さまは私と彼の縁結びの神さまでもあるのか。ありがたや。

 親族控室の廊下で閉まった扉を拝んでいたら、彼に不思議そうな顔をされた。
 たぶん王子さまに出会ってなければ、私はこの人の隣にいなかった。
 あとで彼にも教えてあげよう。
 それから、二人は魚の国の住民としていつまでも幸せに暮らすのだ。

end.(2013/06/01)
2014/06/02

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長らくご無沙汰してました! 閲覧&拍手(多分連打も)、アンケートご回答ありがとうございます!
久々すぎて更新手順が思い出せずブログ公開になりましたが単発SSを一つ前の記事に載せております。よかったら読んで下さいね!

以下拍手から頂いたコメントのご返信です。

020◆三日目
05/23 20:47 サバイバルものが大好きだから絶対そのうち読もうと思っていたお話を


コメントありがとうございます。ツイッターでお礼だけ申し上げて返信が遅れてすみません!! サバイバル部分はそのうち改稿してもっと詳しくしたいと思ってるんですが、本編更新しないで後ろに戻ると良くないよなーと我慢してますv 無人島って言葉の響きに胸ときめきますよねv

6月1日ブログ記事「魚の国の王子さま」

06/01 20:33 ついついこの王子様たちの魚の国が本当に魚の国、と言うかインスマスとか


コメントありがとうございます。耳の横にエラがあるんですねわかります。旅先でとある地方の岬の先(何もない場所)に行った時、村の人たちが皆似た顔つきでかつ余所者が珍しいのか皆に注目されてびびりました。多分あそこはインスマスの村だと思います。

06/01 21:02 全年齢向け作品限定でw ・・・

大人向けはニッチなキャラを追及しすぎてフリーダムになってます。めざせけもの道。がおー。

06/01 21:50 字がきれいな人、道端の植物の名前が出てくる人、魚をきれいに食べる人

コメントありがとうございます。あと星と星座に詳しい人も!! 自分もこうだったらいいのになって思って誰かの後を追いかける成長途中というか不定形のお年頃に、憧れる対象に出会えるって素敵なことだと思うのです。それが小説家や俳優さんであっても身近な人であっても、人生を変える力になるんじゃないかなと。

06/01 23:58 台詞を一緒に合唱したいところです

コメントありがとうございます。あれは意地の張り合いというか、売り言葉に買い言葉ですよ~お肉もおいしいよ~。大学生くらいの男の子が女の子の好きなものをやたらとディスる姿をたまに見たりしますけど、あれは彼女を自分の影響下におきたいとかそういう感情なんでしょうかね、メリットないと思いません?
2014/06/05

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閲覧&拍手(多分連打も)ありがとうございます! 以下拍手から頂いたコメントのご返信です。

6/1ブログ記事「魚の国の王子さま」
06/03 00:18 久々にPさんの新作が読めて、嬉しかったです。


コメントありがとうございます。ファンタジックなタイトルをつけるとリアルな話になる法則(笑) 自分でも久しぶりすぎて更新の時にはどこをどうするんだったかとか、オチはこれでよかっただろうかとか色々悩みつつでしたが楽しんで頂けてほっとしました! なによりです!
2014/06/27

次回更新は6月28日+ぼちぼち転載中 更新予定/進捗

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閲覧&拍手(多分連打も)、アンケートご回答ありがとうございます!

また単発のお話ですが、まとまったものができたので明日の0時にブログで予約投稿しておきます。「下世話ファンタジー」というキーワードでそれっぽく書いた、下町の召喚士のお話です。全年齢向け。

それと、いくつかの作品について「小説家になろう」さんへの転載をはじめました。(「小説家になろう」は株式会社ヒナプロジェクトの登録商標です)
サイトをご存じの方には特に必要ないだろうからダウンロード用に全部の転載が終わったらお知らせしよう~なんて思っていたのですがすぐには終わらなそうなので途中ですがお知らせしておきます。
使いやすい方はどうぞ「小説家になろう」さんの方をご利用ください。明日の更新もブログと同時掲載になります。 →ページのPマイページ

以下は念のため。

・現在特に不自由を感じていない方は引き続きサイトをご利用下さい。内容に差異はありません。
・今後発表するお話は小説家になろうさんと同時掲載になります。
・年齢制限作品は小説家になろうさんの基準に従って転載しているため、自サイト基準とは一部異なります。
・広告スペースが大きくて動いたりするのでご注意を(特に大人向)
2014/06/28

召喚士クレインの日常 サイト・なろう転載済

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ツイッターのつぶやきに「下世話ファンタジー」というお言葉をもらったのでそれっぽく書いてみました。 「小説家になろう」さんと同時掲載です。

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2014/06/29

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閲覧&拍手(多分連打も)、アンケートご回答ありがとうございます! 以下拍手から頂いたコメントのご返信です。小説家になろうさんの方で頂いたコメントは活動報告でお礼申し上げます。

6/28ブログ記事「召喚士クレインの日常」
06/28 07:08 ハチクマという名前は久しぶりに目にしました…でも下世話。


コメントありがとうございます。なるべく益獣っぽい/モンスターっぽくない召喚獣にしようと思いちまちま調べました。楽しかったですv でも下世話。が全てを言い表していますが、こういう世間と設定して書く分には楽しかったです!